スポーツを楽しむうえで欠かせない「栄養」。後編では、トレーニングのフェーズごとに押さえておきたい栄養摂取のポイントから、スポーツにおけるエネルギーの考え方まで、スポーツ栄養士・松岡未希子さんに伺いました。
※本記事は、当社よりケンフェロール含有製品を提供し、依頼したインタビューを編集して掲載しています。
スポーツの種目によって栄養摂取における重要なポイントが大きく変わることはありませんが、一番大切なのは、運動量や体格に応じて「自分に合った食事量」をしっかり摂ることです。
また、有酸素運動と無酸素運動でも、栄養の摂り方には多少の違いがあります。ランニングや水泳、サイクリングといった有酸素運動が多い競技では、炭水化物をしっかり摂取して、体にエネルギーを蓄えることが重要になります。いわゆる“グリコーゲンローディング”ですね。

一方、短距離走やウェイトリフティングなどの瞬発系の競技では、そこまでの持久力は求められないため、試合直前の炭水化物補給はそこまで重視されません。日常的にはもちろん炭水化物が必要ですが、本番に向けたグリコーゲンローディングは行わない場合が多いです。
■トレーニング期間中の栄養摂取
まず、トレーニング期間中は、空腹状態でトレーニングを行うことは避け、運動前には消化の良い炭水化物を摂るのが理想です。運動後は、消費されたグリコーゲン(※)を素早く回復させるため、炭水化物とたんぱく質を一緒に摂るとよいでしょう。
※グリコーゲン……主に筋肉や肝臓に蓄えられた、糖質(ブドウ糖)由来のエネルギー源。血糖値の維持や、運動時のエネルギー供給といった役割がある。

トレーニング以外では、本番に向けていかに体調をコントロールしていくかが最大の準備だと思います。抗酸化作用のあるビタミンA・C・E等を含む緑黄色野菜や果物を、日常からしっかり摂ることが大切です。
とはいえ、お仕事をされていて、なかなかしっかりと食べられない方もいると思います。忙しい日常でも取り入れやすい工夫としては、間食でエネルギー補給をする方法がおすすめです。おにぎり、パン、フルーツ、エネルギーゼリーなど、お菓子よりも「食事に近いもの」を選ぶと、活動量が多い方も栄養をカバーしやすくなります。
■本番前のシミュレーション
本番に向けた栄養面でのシミュレーションはとても重要だと考えています。補食にはゼリー、ジェルをはじめ、ごはんやバナナといった固形物など、様々なタイプがありますので、実際に練習のなかでそれらを試しておくことが大切です。
消化吸収のスピードは人によって異なりますし、ゼリーが合う人、固形物のほうが食べやすい人など、個人差があります。ですので、泳ぐ前やバイクの前後に補食を試してみて、「エネルギーが持続するか」「お腹に負担がかからないか」といった点を確認しておくことで、自分に合った補給の方法が見えてくると思います。
■本番における栄養摂取
胃の中のものが消化されるのには3〜4時間かかりますので、本番で実力を発揮するためには、レースの3時間前には食事を終えるのが理想です。おにぎり、うどん、お餅など、消化がよい炭水化物中心のメニューにしてみましょう。逆に、消化吸収率の良くない脂質や食物繊維の多いものは避けるのがポイントです。

本番を迎える前に、事前に競技の長さに合わせた補給計画を立てておくことも大切です。例えば、競技時間の長いトライアスロンでは「バイクに乗る前に食べる」「トランジションで飲む」といったように補給のスケジュールを決め、うっかり補給を忘れないよう意識づけをしましょう。
補給が不足すると、体内のグリコーゲンが枯渇し、エネルギー切れに陥ってしまいます。本番中は、こまめな補給でグリコーゲンを維持することが大切です。
■リカバリーのための栄養摂取
競技が終了したら、まずは脱水対策として水分補給を。すぐに食事をとれない場合は、プロテインゼリーやエネルギーゼリーなどで栄養を補いましょう。時間を置いてでも、消化に良い食事をとってリカバリーを図ることが大切です。
食事から摂取するエネルギーは「カロリー(kcal)」という単位で表されます。しかし、私たちの体は食べ物をそのままエネルギーとして使っているわけではありません。

私たちは、食事からとった栄養と、呼吸で取り入れた酸素を、ミトコンドリア(細胞の中の小さな工場のようなもの)のなかで「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質に作り変えています。そして、このATPこそが、人が活動するための生命エネルギーになります。
しかし、ATPを作るときの材料になる「糖」や「脂肪」は、ある程度、体内に貯めておくことができるのですが、「酸素」は貯められません。そこで、私たちは1日に2万回以上も呼吸して、ATPを作るために酸素を絶えず送り続けているんです。
たとえるなら、食事から摂取するエネルギーは「銀行に預けているお金」のようなもので、ATPは「引き出して使う現金」のようなものです。

ケンフェロールについては、まだ研究段階の成分ではありますが、陸上の400m走でアスリートのパフォーマンスをサポートしたという報告を聞いています。今後、さらに研究が進めば、将来的に期待できる成分になるのではないかと思います。

「ケンフェロール」は植物に含まれるフラボノイドの一種で、ブロッコリー、ケール、キャベツなどのアブラナ科の植物、豆類や茶葉などに多く含まれることが知られている。
もし体に取り入れやすい形で摂取でき、実際に効果が得られるのであれば、私たち栄養士にとっても、非常に心強い存在になるのではないかと考えています。

自分にとって無理のないレベルで変えていくことが大事だと思います。初めから理想を追いすぎると、どうしても負担が大きくなりますし、継続しにくくなってしまいます。
私も栄養士として、選手それぞれの生活環境(学校や仕事の有無、練習内容など)を踏まえて、その人の1日の流れの中で、どこにどう組み込めるかを一緒に考えます。
継続できる方法を、無理なく生活の中に落とし込んでいくことが、良い食生活を長く続けるためには欠かせないと思っています。
2015年に公認スポーツ栄養士の資格を取得。現在はエームサービス株式会社に所属し、アスリート一人ひとりに寄り添った栄養サポートを行うほか、社内の管理栄養士・栄養士の教育体制づくりや、健康経営に関わる栄養コンテンツの構築など幅広く携わる。